「学研まんが ひみつシリーズ」読書の記憶 四十八冊目



先日、古本屋に立ち寄った時の話。子供向けのコーナーに「学研まんが ひみつシリーズ」の一冊を見つけた。手にとってみた。装丁こそリニューアルされていたものの、中身は僕が子供のころに読んでいたものと同じだった。あまりの懐かしさに、その一冊だけを購入し、いそいそと帰宅した。自宅に着いてから1ページずつ、ゆっくりとめくっていった。自分でもおどろくほど、内容やイラストを覚えていた。ああ、そうだ。こんなイラストで、このセリフだった。うんうん、そうだ。確かにこうだった。と、ひとつひとつ確認しながら、深夜まで読み続けてしまったのだった。

子供のころは、自分で本を買うことができなかったから、手に入れた本は何度も何度も読んだ。それこそ、五回、六回どころか、二十、三十と繰り返しめくった本も少なくなかった。それらの本は、カバーが破けたりページがよれてしまったりもしたけれど、セロテープを貼って補強しながら、大切に読み続けていたものだった。今回購入した「学研まんが」シリーズも、そんな風にして繰り返し読んだ本の中のひとつだった。確か、このシリーズは五〜六冊ほど所有していたように記憶している。いつの日か全巻揃えてみたい。すぐにはむずかしいけれど、一冊ずつ増やしていけば、そのうち全部そろう時がくるだろう。本棚に全巻ずらりと並んでいる様子を想像しながら、その時を楽しみにしていたのだった。

しかし、自分で好きな本を買える年齢になっても「学研まんが ひみつシリーズ」がコンプリートされることはなかった。所有していた本も、実家の建て替えの際に物置にしまい込まれたあと、いつの間にか処分されてしまっていた。あんなに何度も読んだ本だったというのに、処分されたことも気がつかないうちに目の前から消えてしまっていた。

もしも、自分に子供ができたのなら。と、想像してみる。もしも自分に子供ができたのなら、このシリーズを探して本棚に並べておこうかと思う。子供が興味を示して手にとってくれたのなら、それとなく内容について話してみたいと思う。僕が子供のころに興味を持った部分と同じところに興味を持ってくれたら面白いし、もしそうでなかったとしても、ふんふんなるほど、と一緒に読み返してみようかと想像したりしている。

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