【Youtube】オンライン文学講座【佐藤ゼミ】 リンクを取得 Facebook × Pinterest メール 他のアプリ こちらのブログ更新は終了しましたが、Youtubeにて【佐藤ゼミ オンライン文学講座】を配信しています。夏目漱石、芥川龍之介、太宰治、宮沢賢治など、文豪の作品解説を通して「考えるヒント」を提供中。名言や文豪エピソードなど、気軽に楽しめるコンテンツもありますので、ぜひご視聴ください(無料配信です)☈佐藤のYoutubeチャンネル「オンライン文学講座 佐藤ゼミ」☺佐藤への問い合わせは、こちらから。【佐藤ゼミ 仕事の価値は百年後に決まる【夏目漱石の手紙より】 リンクを取得 Facebook × Pinterest メール 他のアプリ
佐藤の本棚 作品一覧(作者名 五十音順) 佐藤の本棚(文学作品編) 公開作品一覧(作者名 五十音順) このブログで紹介した作品の一覧です。 芥川龍之介 トロッコ 芋粥 大川の水 蜜柑 微笑 槍ヶ岳紀行 魔術 漱石山房の秋 鑑定 早春 愛読書の印象 杜子春 春の夜 鼻 安部公房 壁 石川啄木 閑天地 内田百間 漱石先生臨終記 江戸川乱歩 少年探偵団 心理試験 日記帳 梶井基次郎 檸檬 川端康成 伊豆の踊り子 雪国 坂口安吾 桜の森の満開の下 佐々木マキ ぼくがとぶ ふしぎな図書館 佐藤春夫 井伏鱒二は悪人なるの説 志賀直哉 小僧の神様 城の崎にて 島田荘司 漱石と倫敦ミイラ殺人事件 太宰治 人間失格 思ひ出 富嶽百景 トカトントン 皮膚と心 I can speak 一問一答 兄たち 葉 同じ星 谷崎潤一郎 厠のいろいろ 寺田寅彦 夏目漱石先生の追憶 雨の上高地 豊島与志雄 太宰治との一日 夏目漱石 三四郎 こゝろ 夢十夜 坊っちゃん 虞美人草 私の個人主義 明暗 中原中也 月夜の浜辺 夏と悲運 中島敦 名人伝 松尾芭蕉 奥の細道 室生犀星 性に目覚める頃 森鴎外 青年 宮澤賢治 銀河鉄道の夜 よだかの星 セロ弾きのゴーシュ ポラーノの広場 革トランク グスコーブドリの伝記 風の又三郎 春と修羅 序 春 注文の多い料理店 新刊案内 猫の事務所 報告 真空溶媒 村上春樹 ふしぎな図書館 中国行きのスロウ・ボート 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 村上龍 コインロッカー・ベイビーズ 横光利一 時間 頭ならびに腹 犯罪 海外文学 宝島 シャーロックホームズ 幸福な王子 ライ麦畑でつかまえて あしながおじさん かえるの王さま Little Red Riding Hood... つづきを読む »
「鼻 芥川龍之介」読書の記憶(九十九冊目) 中学1年生の時の話。まもなく夏休みが終わろうとしている、八月も末のころだった。クラスメイトのSから「明日、委員長の家に遊びに行ってもいいか」と連絡があった。(その時僕は学級委員をしていたので、みんなから委員長と呼ばれていた) 特に用事もなかった僕は、いいよと答えた。 翌日の午後、SはクラスメイトのOと一緒にやってきた。Sは僕の部屋にくるとすぐに「読書感想文の小説を貸してくれ」と言った。どんなのがいい? と聞くと「有名なやつで、短くて、面白いやつ」という。僕は、そんな都合の良いものはないよ、と言いながら、夏目漱石の「坊っちゃん」を本棚から取り出してSに手渡した。 Sは「夏目漱石? うん、これは聞いたことがある」といいながらパラパラとめくると「長すぎる! こんなの読み終わるまでに夏休みが終わってしまう」と突き返してきた。このくらい頑張って読めよ、と言っても全く興味を示さなかったので、次に僕は芥川龍之介の「鼻」を見せた。 「鼻」のページ数を確認したSは「うーん、このくらいなら読めそうだ」と言った。そして「これ、委員長は読んだんだよね?」と確認してきた。 読んだよ、と僕は答えた。「どんな話か教えてくれよ」とSが言った。すると横にいたOが「内容を教えてもらったら、読書感想文にならないだろう」と言った。Sは「ちゃんと読むけどさ、すこし教えてもらった方が書きやすいと思ってさ」などと、よくわからない理由をごにょごにょと繰り返した。 Sは「じゃあ、これ借りるよ」と鞄の中に本を入れると、Oに「お前は借りなくていいのか?」と言った。Oは、僕は書き終わったからいいんだ、と言った。何を読んだんだよ、とSが聞いても、Oはニコニコと笑いながらはぐらかすようにして、読んだ本の題名を教えてくれることはなかった。 人間の心には互に矛盾した二つの感情がある。勿論、誰でも他人の不幸に同情しない者はない。所がその人がその不幸を、どうにかして切りぬける事が出来ると、今度はこっちで何となく物足りないような心もちがする。(芥川龍之介 鼻より) 夏が終わりに近づく、ちょうど今くらいの時期になると、時々ここに書いたことを思い出す。中一の冬に転校してしまった僕は、あれから二人には会っていない。たぶん再会したとしても、お互いを認識できないと思う。それでもどこかで会う機会があるとする... つづきを読む »