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「ぐりとぐらの かいすいよく」読書の記憶 四十一冊目

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幼稚園に通っていたころの話。「ぐりとぐらの かいすいよく」という絵本の中に、 うみぼうず が、ぐりとぐらに泳ぎを見せる場面があった。僕は、この場面がとても好きだった。海の中を自由自在に、そして勢い良く水面に飛び出してくる、うみぼうず の姿がかっこよくて「いつか自分も、あんな風に泳げるようになりたい」「ぐりとぐらも、すぐに泳げるようになったのだから、自分も練習すれば泳げるようになるはず」と、絵本を開きながら、まだ一度も挑戦したことがない「水泳」というやつに、あこがれていたのだった。 小学生の低学年のころは、ほとんど泳げなかった。家族で海に行ったとしても、浅瀬に浮き輪をうかべて、ゆらゆらと揺れて楽しむ程度だった。せいぜい数m程度しか泳げなかったと思う。ところが5年生になった時、突然転機が訪れることになる。市内で開かれる「水泳記録会」の候補選手として練習に参加することに決めたのだった。僕以外の子供達は、スイミングスクールに通っていたり、自他共に認めるくらいに「水泳が得意」な子達ばかりだった。それなのに25mを泳ぐのがやっとの僕が(希望者は、練習に全員参加可能だった)何を勘違いしたのか、無謀にも挑戦を決めたのだった。 結論から言うと、5年生の時は選手に選ばれることはなかった。当然である。ところが、6年生の時に参加した時には、そこそこ基本ができるようになっていたことと、この頃から身長が伸びて身体的に恵まれてきたこともあって、3種目ほど選手として出場できることになった。そう、僕はいつのまにか「水泳が得意な子供」になっていたのだった。ほんの1年ほど前までは「25m泳げるのがやっと」だったのに、子供の頃の成長というものは恐ろしいものである。 先日、地元の宮城県美術館で開催されていた「ぐりとぐら」の展覧会に行った。展示されている作品を順番に鑑賞していた時に、この「かいすいよく」の絵本が目に飛び込んできた。最後に読んだのは、もう何十年も昔のことだったし、絵本そのものもどこかに紛失してしまったけれど、原画を目にした瞬間、うみぼうず の姿も、ぐりとぐら の細かな仕草も、はっきりと頭の中に 蘇ってきた。 そして、小学生の僕が水泳記録会の練習に参加を決めたのは、この絵本の影響だということに気がついた。心のどこかに、うみぼうず の泳ぎに憧れていた時の気持ちがずっとず