「模試の小説」は、わりと好きだった。読書の記憶 五十六冊目




受験生の思い出と言えば「模試」である。毎月一回(または二回)定期的に行われる「それ」を受験しては、その結果に一喜一憂する。いや、実際のところ、ほとんど対策らしい対策もせずに模試を受験していたのだから、結果はでないのは当然で「一憂」する資格などないはずである。

それなのに結果を見ながら「今回は調子が悪かった!」などと考えていたのだから、実にどうしようもない受験生だったと思う。勉強の成果を確認するのではなく、勉強をしていないことを確認するために模試を受けていたようなものだ。なんというか本末転倒の模試活用方法だったと思う。

そんな中でも、国語の現代文は、わりと好きな分野だった。とくに問題に使われている「小説」は、おもしろいものが多く、しかも良いところで切り取られていることも多いので「ああ、続きが読みたい」と、思ったものだった。偶然、以前読んだことがある作品が出題されている時などは「今回はもらった!」と、わくわくしたりもした。

しかし当然の如く、結果はいつも通りだった。読書が趣味でも国語の成績が良くなるというわけではないのだ。自分の場合、五教科の中で「国語」の成績が一番悪かった(中・高共に、5段階評価で4が最高だったと記憶している)から、読書を楽しむことと問題を解答することは、また別の能力なのだと思う。たぶんそうなのだと思う。

何の話をしていたのか。そう、模試に使用されている小説は面白いものが多かった、ということだった。なので、模試が終わった際に「今回採用した小説はこちらから購入できます」などと紹介されていたら購入してしまうと思う。「こちらの図書館に在庫があります」とスマホに通知が届いたなら、帰宅する途中に図書館に寄ってしまうと思う。読書する人が減っている、という情報を目にすることもあるが、読書をするきっかけとスムーズに本を手にとれるシステムがあれば、本を読む人は増えるのではないか。

いや、学生だけではもったいない。社会人にも「模試(この表記が適当かどうかは別にして)」を実施して、読書体験を増やすきっかけをつくるのはどうだろう。うーん、そうなると義務になってしまって、自発性が損なわれるだろうか。いやしかし、何かできそうな気もする。

【追記】ここに書いたことが【Youtube オンライン文学講座】を始める動機となった。学生はもちろん、社会人のみなさんに「ひさしぶりに読書してみよう」と感じるきっかけを提供していけたらと考えています。気になった方は、のぞいてみてください。

・こちら ↓

このブログの人気の投稿

「漱石と倫敦ミイラ殺人事件 島田荘司」読書の記憶(九十六冊目)

最終回「明暗 夏目漱石」読書の記憶(百冊目)

「早春 芥川龍之介」読書の記憶(六十五冊)