「大川の水 芥川龍之介」読書の記憶 三十冊目
僕は温泉が好きである。
いや、わざわざそんなことを宣言しなくても皆好きだと思うのだけど、なんとなく宣言したくなったので書いてみた。
あらためて、僕は温泉が好きである。
しかし、硫黄臭の強い温泉にはいると、数日「あの匂い」が漂うのが気になってしまう。その時着ていた服も、タオルも、一度洗濯したくらいでは落ちないことが多いので、しばらくの間はタオルを使う度に「うおっ、温泉くせー」と、ひとりごとを言うことになる。
誤解のないように書いておくと、自分自身は「あの匂い」は嫌いではない。むしろ、ほんわかと漂ってくると「うおっ、温泉くせー(ニヤリ)」と、頬が緩んでしまう方である。旅先の思い出などを振り返りながら、また行こう、行けるようにがんばろう、と気合を入れ直したりする方である。ただ、この匂いが苦手な人もいるかもしれないので、嫌がられていないか気になるということである。
香りは昔の記憶を鮮明に思い出させる働きをする、というようなことを何かで読んだことがあるけれど、確かにそれはあると思う。温泉の匂いを嗅ぐ度に、頭の中では、今まで巡った旅先の温泉の記憶が、ぐるぐると混ざりながら回っているのかもしれない。それが、幸福な感覚をもたらしてくれているのかもしれない。