読書の記憶 九冊目:ぼくがとぶ(佐々木マキ)

子供のころの夢。と、あらためて思い出してみると「とくに何もなかった」ような気がする。幼稚園の時に「将来の夢」というような絵を描かされた時があったのだけど、その時も「会社員になりたい」とスーツを着てビルの前に立っている絵を描いて、両親に「他にやってみたいことはないの?」と軽く諭された(?)記憶さえある。そのくらい「地味な夢」しかもっていない幼稚園児だった。

そんな僕でも、ある一冊の絵本との出会いがきっかけで、いつか挑戦してみたいことが見つかることになる。それは「飛行機をつくること」だった。え? 飛行機? そう、飛行機。あの空を飛ぶ飛行機を作ってみたいと思うようになったのだった。

その絵本の名前は「ぼくがとぶ(佐々木マキ)」。主人公のクリクリとした大きな目の少年が、自宅で飛行機を手作りして、空を飛び回る話だ。絵本の中に少年が家の中で飛行機の部品を作って組み立てている場面があるのだけど、道具や作りかけの部品やゴミでごちゃごちゃした部屋の中の様子がかっこよくて、何度繰り返し繰り返し眺めても飽きなくて「いつか、こんな部屋で自分も飛行機を作ってみたい」と思っていたものだった。木を削って、色を塗って、ゴーグルをかけて、自分一人で作った飛行機で外国まで飛んでみたい。どのくらい頑張れば飛行機を作れるのかはわからないけれど、この少年くらいの年齢になれば作れるようになるのかもしれない。こどもなりに、漠然とではあるけれどそこそこ真面目に、飛行機をつくる少年の姿に憧れていたというわけである。

残念ながら僕は、飛行機を作る技術者になることはできなかった。むしろ技術者とは正反対の方向へ進んでしまった。もしかすると僕は、飛行機が作りたかったのではなくて、資料やらなにやらで盛大に散らかった部屋の中で、黙々とひとりで何かを作る仕事がしたかっただけなのかもしれない。ああでもない、こうでもない、うまくいかない、でも絶対にあきらめないぞ。と盛んに静かに黙々と作業を続ける仕事。それならば今の仕事も、ほんの少しだけ共通点があるような気がしないでもなくもなくもない。

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